幼稚園生活

コラム「たいこばしくん通信」

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  • 2020.06.17

    人に「譲る」こととは…

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 関東地方も梅雨入りをしましたが、晴れている日には園庭で遊び、子どもたちの表情も生き生きとしています。
 思いきり遊んで汗をかきながら保育室に戻ってきたところで、「返してー!」「私の!」「ちがう!私の!」と大きな声がしました。1人の女の子が数枚の葉っぱを握りしめ、もう一方の女の子がその葉っぱに手をかけていました。手をかけられた子はそれを振り払うようにして、渡すまいと必死です。そのまま両者一歩も引かず、葉っぱの引っ張り合いです。しばらく激しく主張していたので、教員が「どうしたの?」と聞くと、「よーいどん、した時に見つけたの。」「私が見つけたんだよ。」「お家に持って帰るの。」「お家に持って帰ってママに見せたいの。」と答えてくれました。見つけた物を欲しくなった、取ってしまった、ということではなく、一緒に走っていた時に見つけて、お互いが自分の物だと認識し主張していたのには無理もない状況だったということが分かりました。教員が「そうだったんだ。うーん、どうしようか。」と聞くと、「私が持って帰る。」と一方の子が言うと、もう一方の子は難しい顔でしばらく考えた後、「分かった!じゃあ〇〇ちゃんが持って帰って、私が○○ちゃんのお家に住む!」と言いました。とても良い考えだと思ったのか、「それいいね!そうしよう!」と二人とも満面の笑みです。ですが、すぐに「でも、ママに会えなくなっちゃう…。」と気が付き、もう一方の子もハッとして顔を見合わせました。教師はこの展開に、心が和むと共に、思わずクスっと笑ってしまいました。そして、そんな自分達の会話が楽しくなったのか、2人もクスクスと笑い、最後にはみんなで大笑いになりました。ひとしきり笑った後、「これ、あげるね。」と2人で葉っぱを分け合い、教師から袋をもらって、大事にカバンにいれた子どもたちでした。

 大人が「どちらが最初に見つけたの?」と聞いたり、「返せるかな?」「半分分けにしたらどう?」と案を出してしまえば、すぐに解決したと思われます。ですが、子どもは「自分が見つけたのに。」という思いを消化できずに譲ることになります。それを繰り返していくと、「譲る」ことにマイナスのイメージをもってしまいかねません。
 もちろん、優しさで人に譲るのも大切なことで、子どもたちにも身に付けて欲しいことの1つです。それと同時に、欲しいと思ったものをすぐに諦めずに、自分の主張をすることも大事な力だと考えています。

 自分で納得して譲ること、どうしても譲りたくないと思ったら戦うこと、戦うといっても力ずくではなく、自分も相手も納得するにはどうしたら良いかを考えること。
付け加えておきたいのは、この展開でもそうだったように、「どちらが見つけたか。」は子どもたちの中で最終的には問題ではないこともあり、「ごめんね。」もいらないときもあるということです。
 子どもの言い合いは、喧嘩のように見えて、次の瞬間笑い合っていたり、やりとり自体を楽しんでいる、喧嘩ごっこのようなところもあります。見ている大人としてはハラハラする場面かもしれませんが、子どもが自分たちで答えを見つけていけるように見守り、まずはお互いの主張に耳を傾けてあげてください。

 そうは言っても、時間に制限があったり、ご家庭の状況では答えがでるまでじっくりと、ということがいつもできるわけではないことは想像できます。また、言って聞かせてできるようになることではないと思うので、集団の中で色々な人がいることに気が付き、色々な考えに触れ、経験することで身に付けていって欲しいと思っています。

 一瞬一瞬が子どもにとっては全てで、真剣勝負で生きていることが、羨ましくなります。相手の家に住む、という何とも可愛らしい解決方法で笑い合える間柄で、沢山ぶつかって学んでいって欲しいと思った出来事でした。

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