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  • 2017.10.10

    言葉の筋トレ25 Phantasie ist wichtiger als Wissen, denn Wissen ist begrenzt. 想像力は知識よりも重要である、というのも知識は限られているからだ。

    言葉の筋トレ 石井弘之

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第25回

Phantasie ist wichtiger als Wissen, denn Wissen ist begrenzt.
想像力は知識よりも重要である、というのも知識は限られているからだ。

Albert Einstein
(この言葉は東棟3階グローバルゾーンにあります)

 ドイツ語シリーズ最終回です。

 壁に刻む言葉を選んでいたとき、理数的な文字や数字も入れるつもりだった。

例えば円周率。3.1415926535897932384626433832795……

例えば中学で習う二次方程式。 

例えば元素記号。H He Li Be B C N O F Ne ・・・などを提案していた。水兵リーベ僕の船って覚えた方も多いのではないか。

 だが、デザイナーさんから戻ってきた原稿からは削除されていて、私もあまりこだわらない性格なので、結局そのままになってしまった。理数系では第7回で紹介したDNAの塩基配列だけが採用された。きっとデザイナーさんも文系あるいは芸術系の人間で、何のこっちゃわからなかったのだろう。

 だからアインシュタインの特殊相対性理論の帰結。E=mc2これも候補の筆頭だったが、選ばれなかった。替わりにアインシュタインの言葉を載せることになった。

 アインシュタインはあまりにも有名な科学者であるが、その理論の内容を完璧に理解し、すらすらと説明できる人はそれほど多くないのではないか。私たちが日常に感じている世界の成り立ちを根底から覆してしまう理論である。私たちは空間や時間を最も根本的に変わらないもののひとつとして認識している。もちろん子供の頃に広く感じていた野原が大人になって訪ねるとあまりに小さく感じたり、辛い仕事をしていれば時間を長く感じたりということはある。でもそれはあくまでも人間の感覚の問題だ。空間そのものが歪むこと。時間の進み方そのものが変わること。これをアインシュタインは見抜いた。

 理論の一部を紹介しよう。

・光の速度に近い速さで動くものは、時間が遅く流れる。

・重いものの周りでは、空間が歪む。

 理論が正しいかどうかは、実際に観測されている事実、真理として認められている理論などと矛盾がないかどうかが問われる。あるいは実験で再現性があるかどうかが問われる。すると今まで説明のつかなかった現象が、新しい理論を認めることによって解決していく。

 体重130kgの人の周りは、45kgの人の周りより空間が歪んでいる。ただ人間の体重なんていうのはたかが知れてるので観測ができない。ところがブラックホールのような場所では光の進み方などから重いものの近くでは空間が歪んでいることが確認できるのだ。逆に言えば、光が真っ直ぐ進まない現象を説明するためには、重いものの周りで空間が歪んでいると考えると都合が良いということだ。

 と、頭ではボンヤリ理解はしていても、実感が湧かない。時間が遅れるってどういうこと?空間が歪むって何?となってしまう。

 哲学の分野では存在を相対的に捉えるという考えは古くからあった。私たちが感覚的に持っている常識というものが、決して不変的・絶対的ではないということがアインシュタインによって科学の分野でも明らかになった。そしてPhantasie想像力こそがそれを発見する原動力だったのだろう。

 想像力に壁を作ってはいけない。どんな分野でも今の状況を当たり前だと思ってはいけない。より正しいこと。より美しいこと。より素晴らしいことが、その壁の向こうに存在するかもしれないからだ。

 成城学園の生徒には無限の想像力を広げられる人に育ってほしい。


 そうそう、壁に刻む言葉で、こんなのも考えていた。結局カットされたけど。

一 十 百 千 万 億 兆 京 垓 𥝱 穰 溝 澗 正 載 極 恒河沙 阿僧祇 那由他 不可思議 無量大数

想像力が広がるのにねぇ。 

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